p9
国際疼痛学会の「痛み」の定義。
痛みは感覚の異常だけではなく「情動」を伴っている。
「心因性疼痛」に特有な症状
・一般的な鎮痛剤が効かない
・独特の痛み方
p11
痛み
┣急性疼痛
┗慢性疼痛
┣(例えば)ヘルニアによる疼痛
┗修飾された疼痛(心因性疼痛)
本書での便宜上、心因性疼痛を慢性疼痛と呼ぶ。
p14
どの患者さんも、心療内科にたどり着くまでにさまざまなことを行っている。
p16
なお、本書では心因性による慢性疼痛をテーマとして扱っていますが、同じ慢性疼痛で、ときとして心因性と診断されがちな疾患に線維筋痛症があります。
p22
あの夏樹静子さんですら、心療内科を受けようとしなかった。
p32
心身症とは「身体症状を主とするが、その診断や治療に、心理的因子についての配慮が特に重要な意味を持つ病態」
p33
「倒れてのち病む」=「失体感症」
p34
身体の病気であれば「立派な病気」として、医者に任せて治療してもらえる。
心因だと自己責任となって苦しい。
p35
かかる病気の種類と、心因性かどうかは、関係が無い。
一般の内科の患者は、私生活に手を触れられなくて済むのに、心療内科だと、屈辱的な思いをする(と勘違いする)
p37
身体表現性障害:医者が見てもおかしなところは無いが、患者は納得しない状態。
┣心気症:異常がないのに病気だと騒ぐ
┣身体化障害
┣転換性障害→こころのねじれが原因のことも。(夫の浮気、婿養子への罪悪感)
┗疼痛性障害(心因性疼痛)
p42
ここは疑問。当初「
転換性障害」の例として紹介され始めたのに、
いつのまにか
心因性疼痛
話になっていて、これはp38の記述と矛盾するように見える。まぁ、本書ではここの厳密な分類は重要ではないのだろう。
p38
>身体表現性障害には、「疼痛性障害」(
心因性疼痛)、「心気症
」のほか、「身体化障害」「
転換性障害」などがあります。
p47
「それはそれ、これはこれ」つまり「罪悪感は罪悪感、痛みは痛み」と別々に考える患者に対して、それは同じものだと自覚させることから心療内科医の治療ははじまる。
p50
一方で、器質異常の見逃しもありうる。「所見はない」というエビデンスは重要。
p56
作用機構は完全には解明されていない。
副作用は起こらない。
p59
心因性疼痛の治療では、勝手にくすりを止めないこと。
慢性疼痛は脳が痛みを覚えている。
再発時は以前効いていた薬が効かなくなることもある。
p61
再発させないためには、心印を克服する必要がある。
p66
緊張が取れた時に発症する「がっくり盲腸」
>念願の昇進や結婚、優勝といった慶事のあとにくる「がっくり」もあります。
p69
初発時:抱え込みすぎ(母と妹の面倒をみるも不和→治療と別居で解消)
再発時:がっくり(娘の結婚、喜びと安心だががっくり)
p74
痛みのメカニズム
外因性の刺激(切り傷等)→脊髄→脳の大脳皮質
副腎皮質からアドレナリンが出る→血管の収縮や筋肉の緊張→乏血→内因性の発痛物質
慢性疼痛の場合、大脳皮質ではなく、思考を司る
前頭葉が活性化し
ていることが
MRIでわかった。
これが「脳が痛がっている」「心が痛がっている」の正体。
p79
九大に日本で初めて
心療内科ができたとき、精神科の患者が押し寄
せて困った。
p92
最初の1週間は完全隔離。絶対臥褥(寝るだけ。動き回るのも禁止)。
次の2週間はプレパラートや窓ガラスを完璧に磨く作業。
そのあとはモップがけ。
日記は書かされるが、コメントも励ましもない。
1ヶ月後外出許可。暗示にかかりやすい状態になっている。
p104
とらわれのある患者は自分が一番苦しいと思っている。不眠であれ、心臓発作であれ、腰痛であれ。
きちんと記録をつけて、原因を探る。
あるいは、気にするな、といわれて、気にしないようにする。
どちらもとらわれである。
不眠の患者は寝なくても良い。翌日会社に行って、当然はかどらない。でも定時まで居られたら100点、いられなかったら0点。
「すっきり目覚めて元気に働く」イメージのとらわれを外す。
p115
平木氏のクリニックでの初診時のテスト
・CMI
・SDS
・POMS
・STAI
・バウムテスト
p121
心が原因
→自分はこんなにも弱かったのか
→気にしすぎて神経質になる
→とにかく痛みが気になる
悪循環
知的で明るくて協力的な患者なので、いろいろと聞き出した結果、
・自己暗示
・精神交互作用
・心的荷重
などが認められた。
p131
絶食療法の紹介(通常では軽快しない患者向け)
p138
絶食療法は身体的疾患も含めて意外と幅広い
p143
【雑念がありながら】公式を実行することが重要
p146
「専門医をたらい回しにして、あとで誰もその病気の全体像に責任が持てないような治療関係をつくらないこと」(北見公一「脳の痛み 心の痛み」)
p151
治った=「治療によって根本的によくなったとも感じないが、いつの間にか、以前できなかったことが自由にできている自分」を発見できる状態
禅「繋驢橛」(けろけつ:ロバをつなぐ杭、逃れようとすればするほど食い込む)
p156
ステイ・アクティブ
患者に痛みがあっても行動できるなら行動させよう、という考え方
p161
1)「ステイ・アクティブ」を目標とすること
2)毎日の疼痛記録はやめること
3)根性論で頑張ろうとしないこと
5)「あるがまま」を実践すること
6)すっかり治そうと焦らないこと
7)治りたいがための悪あがきはしないこと
8)薬物治療の場合、症状が改善されてきたら、できるだけ長く服薬を続け、その後徐々に減量し、早々の中止や中断をしないこと
p171
家族のロールプレイ
患者「痛い」
家族「また痛んできた?今日はどれくらい?どのへんが痛い?」
患者「腰の真ん中から下あたりが、じんじんと噴火するように痛い」
家族「そう、腰の真ん中から下あたりが、じんじんと噴火するように痛いんだね」
患者「そう、腰の真ん中から下あたりなの」
家族「そう、腰の真ん中から下あたりなのね」
患者「起き上がれないのに、仕事をしなければならないと気ばかり焦って」
家族「そう、起き上がれないのに、仕事もあるし、焦るよね」
家族「辛いだろうけど、希望を持っていこうね」
心因性疼痛の場合、患者は「わかってもらえた」と思うと、それ以上痛みを表現する必要がなくなる。逆に「わかってもらえない」と思うと、ますます症状がエスカレートする。
p184
p191
メンタルチェックが必要
それが、症状の固定化を防ぐ上で重要。