保守脳とリベラル脳(2018/9/23 BSフジ「ガリレオX」善と悪の科学)
極めて主観的な体験である「意識」を研究している、アラヤ代表の金井亮太さんは、政治についての意見のような、現実社会を対象とした倫理的価値判断にも、生物学的な要因が影響しているのではないかと考えています。
そこで金井さんは、保守やリベラルといった政治的スタンスと、脳内の構造とに、何らかの相関関係があるのではないかと考えました。
「政治的に保守的であるかリベラルであるかというのは、人それぞれの意見があると思うんですけど、社会心理学的な研究で、こういった政治に関する意見の違いというものが、実は性格の違いなんじゃないかって事は言われてまして、
たとえば保守的であるっていうことは変化を嫌ったり、つまり変化っていうのは不確かさが高まるわけですよね。人間のその心理的な特性として不確かの状況を避けたいというものは当然あってですね、それが強い人ほど保守的な性向を持ちがちなんじゃないか……」
イギリスの学生を対象に、政治的信条について聞き取り調査をすると同時に、MRIを使ってその脳構造に何か共通する違いがないか調べました*1。
「そうするとですね、まず保守的な人は脳の中の扁桃体といわれるところが大きい傾向にあった。そこは一般的には恐怖を感じる時とかに活動する場所だと言われています。それが先程のその保守的な人は不確かさを避けるような傾向があるということと対応しているな、と。
それからもう一つ、対立する概念みたいなものがあるときに、それをうまく解決するような脳の部位(注:前帯状皮質)があるんですけど、その部分がリベラルな人ほど大きかったということがありまして、つまり違う考え方とか、コンフリクトがあるような状況でも対応することが得意で、リベラルな政治的な意見を持ちがちなんじゃないかと。
そこの因果関係は中々難しいんですけれども、少なくとも部分的には、政治的な傾向というものと脳には何らかの関係がある」
*1:
Moral Values Are Associated with Individual Differences in Regional Brain Volume
(道徳的価値は、局所的な脳容積の個人差と関連がある)
Gary J. Lewis, Ryota Kanai, Timothy C. Bates and Geraint Rees(2012).
Journal of Cognitive Neuroscience.
https://www.mitpressjournals.org/doi/full/10.1162/jocn_a_00239