宇宙人・かぐや姫から人間・かぐや姫へ
映画「かぐや姫の物語」
自分の記憶の中である竹取物語では、例の貴族の求婚とその失敗について、かぐや姫は何を考えているか分からず、割と唐突に月へ帰ることになった、というお話だった。
「浦島太郎」と同じく、ハッピーエンドでもない、お約束でもない、初見では先が見えないタイプで、あえて悪く言うと強引な物語だった。
さて、この「かぐや姫の物語」では、どこにどのようなオリジナル要素が入ってくるのか。
公開後3ヵ月経って、そろそろ上映館も限られてきたタイミングで、テレビCMや映画館での予告編以外の予備知識なしで観に行った。
若干二、三回、うとうとしてしまいました。ごめんなさい。
映像は素晴らしかった。
オリジナル要素の補完は、ミクロではうまくいっていた。姫に感情移入して見ることができた。
けれど、マクロのストーリーとしてはうまくいっていない気がした。
ミクロの部分では、都にあがるまでの幼少期や、都にあがってからの修行期を、捨丸をはじめとする里の子どもたちとの交流や、ロッテンマイヤーさん*1家庭教師の相模や近くに仕える女童、変わっていく翁と変わらない媼とのやりとりを通じて時間をかけて描くことで、人間・かぐや姫に感情移入できた。
一方、マクロの部分、宣伝文句の「姫の犯した罪と罰。」の要素については、断片的にしか感じられなかった。
罪ってなんだろう。
私にとっては、求婚した男たちを不幸にした「罪」は、まぁどうでもいいので、あれほど自分を可愛がってくれた翁が、自分を束縛するので、そこから逃げ出したいと思ってしまった「罪」がまず気になった。
物語前半で、かぐや姫は一度逃げる夢を見る。番宣でよくみたシーンはここだった。
非常に圧倒的なアニメーションで、「え?まさかストーリー改変するの?」と心がざわつき、夢とわかった時には「あぁ、よかった、翁と媼が悲しまずによかった」と思った。
その後、例の貴族の求婚とその失敗があった後、物語後半で、割と唐突にかぐや姫は月への救難を求めてしまったことと、それが届いてしまったことを告白するのだが、ここが前半の逃げる夢と演出上つながっているのだとすると、それは私には読み取れなかった。前半は夢オチ(よい夢オチだが)、後半は説明セリフにしか聞こえなかった。
また、個人的には、子供の頃に兄のように慕い、都で予期せず再び出会い、そして物語終盤で、結婚して里に戻ってきた捨丸を誘惑するのも「罪」だと思った。
本人にその気がなくても生まれながらに男を魅了する力を持つかぐや姫が、その力を知りつつ自分の淋しさを紛らわすために捨丸を誘惑したように見えた。
このシーンは、一般の映画なら普通に情事になっていると思うが、ここをジブリ風ファンタジーで処理した。となりのトトロや魔女の宅急便や、いろいろと見覚えのあるアングルで空を駆けるので、あぁ、夢か……とすぐに想像がついてしまった。
最後のシーンの月の人々の外見、そして音楽は、予想通りでもあり、予想外でもある。
客観的というより、当時の日本人にはあぁ見えた、あぁ聞こえたというように理解したい。
漂着した西洋人が天狗に見えたり、トマトを「赤ナス」と呼んだりしたように。